
今年のシュトーレンは秋映、バニラ、シェリー酒を楽しむ一品になります。
ぜひここだけは!というポイントを決めるなら“香り”に注目していただきたいです。
包装を解いた時に広がる香り、口に入れる時に鼻を抜ける香り、咀嚼し飲み込む時に内側から鼻を抜ける香り、余韻の香りです。秋映、バニラ、シェリー酒の混ざりあいやバランスなどを楽しんでいただければと思います。
普通のパンは、乾燥していくのと同時に香りも揮発していきますが、シュトーレンはバターとバニラの入ったお砂糖によって内側に閉じ込めています。冷蔵保存での熟成していく香りも面白いです。
ぜひ端っこを残しながら生地同士をくっつけて香りが漏れないよう保存し、時間をかけて少しづつお召し上がりください。

〈真ん中から食べ進めて、ピチッとラップがおすすめです〉
パンはだいたい200℃弱から250℃の温度帯で焼き上げます。
それによって生地のガスが膨張して、グルテンが固まり骨格ができ、水分が抜けこんがりと焼き色がつきます。
香り成分はどうなるかというと、100℃を超えると水分が蒸発するのと同時に空気中に揮発してしまいます。
その代わりに120℃を超えた温度になってくると、結びついたアミノ酸と糖が熱に反応し香ばしさを生み出したり、糖がカラメル化し風味が生まれます。パン屋さんの前を通った時にふわっと鼻を抜ける香りはこれです。
これらの反応で生まれるパンの香り成分は、食品香気化学の研究では揮発性化合物は300〜600種類以上検出されると報告されています。
では狙った香りを出せるかというと、分子レベルで完全に香り成分をコントロールすることはできません。そもそも複雑に混ざり合っていて嗅ぎ分けられるのかといった問題もあります。
しかし、酵母や発酵のもっていきかた、焼成温度や時間で鍵となる香気成分を狙い撃ちすることは可能です。より香ばしく、ミルキーに、バター感強く、フルーティに、ナッツ味のあるなど出来上がりのパンをイメージにあった香りをメインにもってくことが上手な職人さんもいます。
これを逆手にとり、もともと生地の中に含ませた香りをできるだけ残すことをイメージしてつくったのが今回のシュトーレンです。
香りの大半は水分と共に抜けてしまうことが分かっているので、水分でない部分に香り成分を残すことに重点を置きました。ありがたいことに多くの香り成分は脂溶性なのでバターに閉じ込めたり、マジパンに含ませたり、粉と水分の結合を強くしたりなど可能な限り香りを入れ込みました。
花粉のせいか冬の半年くらいは鼻が効かない自分でも感じる香りがあるので、自信を持ってお届けできそうです。
化学製品で香りを添加することは簡単ですが、有りものを使ってできる風味の良さも面白がって、楽しんで、時間をかけて召し上がっていただけると幸いです。

〈濃く抽出するためにセミドライにした秋映〉

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